COLUMN住まいのコラム

住宅のコストダウンポイント 家づくりの見る成功の鍵 Vol.6

イエタッタ編集部
2024.03.21

一級建築士が解説! 

住宅のコストダウンのポイント

 

コストダウンは値引き交渉ではない

家づくりは高額なお買い物のため様々な話が飛び交います。その1つに値引き交渉の話がありますが、近年は交渉でお客様との関係性悪化を避けることや業務効率化、情報の透明性を図るといった様々な理由で、交渉の余地のない正しい見積を提示する企業が増えています。では、どうやってコストダウンを図ればいいのかポイントをお伝えします。

 

建設コストはずっと上がっている

新型コロナウイルスの世界的な蔓延で、ウッドショックをはじめとした物価上昇が起きました。多くの報道で住宅の価格が上がったことは皆さん知っていると思いますが、実はコロナをきっかけに目立って上がっただけで、建設業自体はコロナ前からずっと物価上昇が続いています。主な理由は、材料の多くを輸入に頼っているため、国内外の経済に影響を受けやすいことや、慢性的な職人不足による人件費高騰です。そのため住宅ローンの融資金額は右肩上がり(図1)。

 

イエタッタカウンター利用者の契約金額の推移を見てもやはり右肩上がりな傾向です(図2)。所得が増えない中で家づくりのハードルがどんどん上がっています。このハードルをクリアするために、正しいコストダウンの秘訣を知っておかなければいけません。間違った方法でのコストダウンは、後々の後悔につながる可能性があるので注意して下さい。

 

コストダウンに効果的な3つの方法

一般的な住宅会社の見積の作り方は、お客さんの要望を踏まえて集めたメーカーや業者の見積に、自社の経営に必要な利益率を掛けて算出します。利益率は各社の考え方によって異なりますが、基本的には入っている中身で金額が変わるはずです。つまり、高性能や高品質なもの、面積が大きく材料を沢山使うものは金額も高くなります。土地については、利便性や形、方位、接道条件といった複数の要素で価格が決まります。中でも利便性の良さが価格に与える影響は大きく、県庁所在地や駅前等は坪単価が高く、人口の少ない自治体や公共交通機関が不便な立地は安いです。以上のことから、コストダウンするには「性能・品質を下げる」、「面積を小さくする」、「不便な立地条件の土地にする」の3つになります。

 

 100万円以上の大きな予算オーバーは、仕上げや住宅の設備機器を細かく見直すよりも、全体に関する規模、性能、土地を見直すのが先決。

1.全体的な性能・品質を下げる

耐震性能、断熱性能、耐久性等はどんな材料を使うかによって決まるものです。住宅には性能表示制度があり、その等級の数値が高ければ高いほど高性能を意味します。例えば耐震性能を上げるには沢山の補強を施し、断熱性能を上げるには断熱材を厚くする。つまり、沢山の材料を使うからコストが上がります。その代わり安心安全、快適、光熱費やメンテナンス費用の削減等の暮らしてからの付加価値が手に入るイメージです。性能や品質を下げると工事費は下がりますが、逆に暮らしてからのランニングコストが上がる可能性もあるため、理解ができていない状態での性能や品質ダウンはあまりおすすめしません。

2.面積を小さくする

 家の面積が大きいと、ありとあらゆる材料を沢山使うことになります。家づくりは小さいよりも大きい方がいいといった心理になりやすいですが、面積を小さくできればコスト削減に効果的です。面積を小さくするためには、必要のない空間を作らないことに尽きます。例えば、靴が少ないならシューズクロークはいりません。まとめ買いをしないならパントリーはいりません。このように自分たちがどのように暮らしたいかで、必要な空間は人それぞれ決まります。自分たちのライフスタイルを理解して、本当に必要な空間かどうか判断し、面積を小さくしていきましょう。そうすることで工事費だけではなく、将来のメンテナンス費用や電気代等もコストダウンできます。

3.不便な立地条件の土地を選ぶ

 土地の価格は利便性に左右されます。人口の多い自治体、道路の幅が広い、駅が近い等、需要が高い要素が揃っている土地の坪単価は高いです。土地の価格を安くするには、逆の条件で探していきます。より人口の少ない自治体、道路の幅が狭い、公共交通の利便性が悪い等の条件のため、知識がなくても感覚的にイメージしやすいでしょう。ただしデメリットばかりではありません。特に人口の少ない自治体平成の市町村合併で合併した自治体は、人口増加対策に予算を通している場合が多いです。そのため定住促進といった住宅関連の補助金が充実していたり、子育て支援で医療費が無料等、暮らしやすい制度が整っています。土地のコストダウンと同時に暮らしやすさの充実にもつながるかもしれません。

 

 

 

解説:一級建築士 鶴見哲也

1986年石川県かほく市出身。新潟大学大学院修了後、金沢市の設計事務所や住宅会社で8年半建築設計業務に従事。2019年(株)ミライエ・カンパニーに転職し、メディアの立場から家づくりをわかりやすく、失敗しないようサポート。イエタッタカウンターでは勉強会や個別予約で直接相談可能

 

 

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