グラスウールはダメ...?
こんにちは、隅です!
昨年は桜をたくさん見に行った気がしたのですが今年はほとんど見ずに散ってしまいました...
皆さんはお花見されましたでしょうか?
先日お客様からある質問をいただきました。
弊社基本的には高性能グラスウールに気密シート張りという壁構成の仕様でお家を建てることが多いのですがそれに関係した質問。
「グラスウールがよれてしまうことがあると聞いたのですが、大丈夫でしょうか?」
確かにグラスウールがよれたり、変形したり、ズレ落ちたりするから使わない方が良いと聞くことがありますね。
ではなぜグラスウールがそのようなことになってしまうのでしょうか。
写真のピンク色のものがグラスウールですがガラス繊維が大量に集まった綿みたいなものです。
このガラス繊維自体が断熱の役割を担うのではなくガラス繊維の間の動かない空気が断熱の役割をしています。
そして、一般的な壁構成がこちら(一部抜いてあるものもあります)
構造用面材というのは地震に耐えるために構造材(柱など)の室外側に施工される板のような材料で、これは断熱材の室外側に施工されます。
通気層というのは壁の中で発生した、入ってしまった熱や湿気などを外に排出するなどの役割を担っています。
グリーンの線が気密シート
ピンクの部分がグラスウール(断熱材)となっています。
それでは冬にグラスウールがズレ落ちる原因を見てみましょう。
室外(外気)の冷たい空気は断熱材で遮断されるため室内には入りませんが断熱材の室外側(構造用面材の裏)は冷やします。
室内の暖かく、湿気を持った空気は気密シートがしっかり施工されていれば壁の中には入れず問題ありませんが気密シートの施工不良(穴)があった場合、そこから室内の湿気を持った空気が入り込み外気で冷えている断熱材の室外側に到達することで結露が起こり、その結露水によりグラスウールが段々とズレ落ちたり、その水がカビてよくネットで見るような黒いグラスウールが誕生します。
その対策として、
冬の場合は単純で断熱材の室外側の冷えたところに室内の湿気を持った空気が到達しなければ良いので穴の無い気密シートの施工を行います。
(付加断熱等により冷えを押さえるという方法などもあるとは思いますが今回は一般的な場合として)
これにより壁の中で結露が起こらないのでグラスウールがズレ落ちることはありません。
ちなみに室温22℃で相対湿度40%の場合、その空気が約8℃の場所に触れると結露を起こしますので冬場は壁の中に室内の空気が入れば簡単に結露が起こります。
次に夏の場合を見てみましょう。
夏は冬とは違い少しややこしいです。
室内の涼しい空気は気密シートの施工がしっかりしてあれば壁の中には入らず断熱材の室内側で留まりますが気密シート付近は冷やします。
室外(外気)には熱、湿気、日射があります。
夏の熱と日射は構造材である木材を熱します。木材は基本的に乾燥している材料を使用しますが全ての水分が抜けきっているわけではなかったり、湿気を吸ったりもしているので熱せられるとその持っている水分を壁の中に湿気として吐き出します。
その湿気が冷えているグラスウールの室内側にぶつかると結露を起こす可能性があります。
そして、室外の暑い空気は断熱材で遮断されるため室内には入りませんが夏の外気の湿気が壁の中に入り込むことはあります。
その湿気が冷えているグラスウールの室内側にぶつかると結露を起こす可能性があります。
その対策として、
壁構成の図の説明で記載しているように壁の構成の中には通気層という壁の中の湿気を外に出す層があり、そこから壁の中の湿気を排出します。
これは夏に限らず冬も春も秋も同じ役割を担っています。
その際に重要となるのが構造用面材です。壁の中の湿気は通気層に出るまでに構造用面材を通ります。
この構造用面材は湿気を通しやすい物や通しにくい物などたくさんの種類があるので湿気を通しやすいものを使用する必要があります。
そして、気密シートを調湿気密シートという壁の中に湿気が溜まってしまった際に結露が起こらないように湿気を室内に逃がすようなシートを使用することもあります。
その際に重要になるのが湿気を室内まで通すということはただのビニールクロスでは湿気を通さないので湿気を通しやすい内装材とする必要があります。
さて、ここまでがグラスウールがよれたち、ズレ落ちたりしている原因となります。
グラスウール自体はガラス繊維ですので湿気を吸うことはありません。
ただ、水に強いわけではないので壁の中で結露が発生し水が滴れば段々とズレ落ちたり変形したりします。
これはグラスウールだからどうこうというわけではなくて、断熱材の種類によってはズレや変形がないかもしれませんが結露水によって構造材が劣化したり、シロアリを寄せ付けたりする可能性はどの断熱材でもあります。
ここまで材料についても説明させていただきましたが
「構造用面材は~を使っているから湿気を通すので大丈夫!」
「調湿気密シートを使っているから大丈夫!」
「断熱材は~を使っているから劣化もしないし結露も起こらないし大丈夫!」
と言われてそれを信じて自分が安心できれば良いですが正直言葉にするだけなら簡単ですし、非常に曖昧です。
それを確認するためにはある断熱材で、ある壁の構成での結露計算を行い結露が起こらないことが分かれば安心できると思います。
結露計算では冬や夏の温度、湿度の設定は今後悪くなっていくであろう地球環境を考慮し、ある程度厳しめに設定し余裕を持たせたりもします。
気密シートの穴に関しては気密測定の結果により穴が無いことが分かります。図からも気密層(気密シートなど)が劣化すると危ないことが分かると思いますし劣化しにくい施工も重要です。
ここまでの長話で分かるようにグラスウール自体がダメなわけではなく施工や壁構成が悪いだけでグラスウールのせいにされている可哀相な材料なのです。
ついでにグラスウールの施工についてもお話したいと思います。
長すぎるのでまた次回...