なぜ家を建てるのか?暮らし方から考える家づくり
「なぜ僕らは今、リノベーションを考えるのか」
著:大島芳彦+ブルースタジオ
定期的に建築系の専門書籍を読んでいるのですが、家づくりの本質とも感じられることが書いてあったのでぜひ紹介したいと思ってブログを書くことにしました。
”新築住宅を購入することができる経済力を持ち合わせながら、あえて中古住宅を購入する人がいる。マイホームを所有することは人生の目標ではないと考え、軽やかに賃貸住宅を住み替える人がいる。そんな価値観が、当たり前に存在する世の中になりつつある。”
家づくりを考える世代で、若い世代ほどこのような価値観を持ち合わせているのではないでしょうか。
結婚して、子供を授かり、新築一戸建てを構えて一丁前だと親からのプレッシャーがあるかもしれませんが、それが人生の全てではありません。
一つの職場に定年退職まで勤め上げて当たり前、途中でやめるのは甲斐性が無いからと言われていたのも一時代前の話で、今は国内超大手の社長が終身雇用が難しいと断言し、早期退職者を募り、転職が当たり前になったからジョブホッパーと言われる短いスパンで転職を重ねてキャリアアップする人にも注目されるようになりました。
家づくりも仕事も社会の流れによって、大きく価値観が変わっているのです。
家づくりと就職の話は似ていると考えています。
その理由は、ゴール設定を間違えたらたくさんの労力やコストが無駄になるからです。
就職において間違ったゴール設定は、「○○に就職する」ことです。
大手に就職する、年収600万の仕事に就職する等、就職するのがゴールになるとその後がんばって働けません。
就職先で何を実現させたいかをゴールにしないと、毎日毎日働き続けられません。
その結果、嫌だから辞めるとなり、やりたいことがないから次の仕事が分らないと路頭に迷うなんてことも起きかねません。
家づくりにおいて間違ったゴール設定は、「一戸建て住宅を手にする」ことです。
親がそろそろ建てろと言うから、友達が家を建てたから、だから私も新築一戸建てを手に入れたいんだという考えは、とても心配になります。
なぜなら家を建てても、何も実現されないからです。
アパート暮らしで子供が走り回って下の階に気を遣うから一戸建てにという方がいます。
その気持ちはわかりますが、一戸建てになっても隣近所への気遣いは必須ですし、問題がすり替わっているだけで解決にはいたりません。
これは一つの例ですが、他にも住まいを替えたからと言って解決する問題ではないことは多々あります。
では家づくりで最も大切な価値観とは何か。
それは「暮らし方」です。
どのような暮らしがしたいのか、どのような地域で暮らしたいのか、暮らし方のイメージから家づくりを始めることが家づくりを上手く進められるコツです。
理想の暮らし方が描けたならば、新築一戸建ても中古もマンションも賃貸もただの選択肢の一つでしかありません。
家づくりは予算からなんてことも言いますが、個人的には暮らし方のイメージからスタートするのが良いと考えています。
旅行が好きで年に2回海外行きたいから家は質素倹約でいい暮らし方も一つですし、愛犬が走り回れたり趣味のアウトドアを楽しめる庭付きの暮らしがしたい等、趣味や好きなことと生活を結び付けて考えると良いかもしれません。
この期に及んでは増税前にどうしようというのも間に合いません。
これから家づくりを考える方は焦らずに、理想の暮らし方、人生の歩み方といった視点で考えてみてはいかがでしょうか。
そう感じさせられた一冊でした。